
都市を構成する材料のうち最もありふれたものは何だろうか。マンション1棟、道路の1区間、手のひらの半導体チップ1片がすべて同じ粒から出発する。ヴィンス・バイザーの『砂がつくった世界』(カチ、2019)は、その当たり前を揺さぶりながら始まる。
本書は砂という単一の材料を軸に現代文明の物質的基盤をたどるノンフィクションだ。建築とガラスと電子部品がどのように同じ原料の上に立っているのかを次々と示していく。学術書の文法よりルポの呼吸に近く、予備知識がなくても読める。
核心は砂が無限ではないという事実だ。砂漠の砂は風に削られて表面が丸く、コンクリートの骨材として使いにくく、建設に適した角ばった砂は川や海岸、湖の底に集まっている。採取が一か所に偏れば河川の地形と地下水、海岸線がともに揺らぐ。
冬は国内の建設現場が工程を急ぐ時期だ。骨材の需要が上がる季節に原料の出所をたどり直す作業には時宜性がある。コンクリートはセメントのせいで炭素問題としてしばしば名指しされるが、体積の大部分を占める骨材は議論から抜け落ちる。

本書の力は視野の広さにある。資源一つを手がかりに建設と電子、都市化をともに結びつけながら、問題を特定の業界や特定の国の過ちに押しつけない。需要をつくったのは、より広くより高い都市を望んだ社会全体だからだ。消費を悪と規定するかわりに物質の流れを追う叙述が、誇張なく説得力を持つ。
薄い部分もある。2019年に出た本のため、その後の再生骨材技術と循環資源制度、各国の採取規制の変化は盛り込まれていない。代案を設計する案内書というより、問題の規模を感覚させる本に近い。国内の骨材がどこからどれだけ供給されるのかは読者が別に埋めなければならない。
単一の資源を扱ったノンフィクションが概ね希少鉱物やエネルギーを選んできたとすれば、この本は安くてありふれたものを選んだ。高くないために監視されず、監視されなかったために規模が大きくなった資源の話だ。資源循環を語るときリサイクル率の低い品目から見るべき理由ともつながる。
希少鉱物やエネルギーを扱ったノンフィクションが枯渇の時点を計算しながら緊張をつくり出してきたとすれば、この本は枯渇より採取の痕跡を追う。川底がえぐられ海岸線が退く場面が統計より長く叙述される。値をつけにくいものがどのように消えるのかを示そうとする選択だ。
