
海の最も深いところは長らく手の届かない領域と見なされてきた。光も人もほとんど行かない。水深2000mに生きる生物の92%の体からマイクロプラスチックが出た。韓国の研究陣が蓄積経路まで突き止めた結果だ。
この検出率は、汚染がどれほど広く拡散したかよりも、私たちが汚染を理解してきた方法を揺さぶる。マイクロプラスチックは浜辺に打ち寄せるもの、海流に沿って漂うもの、いつか引き揚げられるものとして扱われてきた。深海2000mは引き揚げられる場所ではない。
この問題を海の向こうの出来事と見なしてきた通念はここで終わる。
そうであれば対応の中心も移さなければならない。これまで海洋プラスチック政策の相当部分は回収だった。海岸清掃活動、浮遊物回収船、漁具回収事業。
いずれも必要な仕事であり、目に見える成果を出す。排出されたプラスチックが細かく砕けて2000m下の生物の体に入った後であれば、回収という道具は働きかける対象を失う。
回収量を増やしても排出量がそのままなら総量は減らない。回収の人手や予算が足りないからではない。排出そのものが続いているからだ。
反対側の論理も手ごわい。排出を減らそうという話は生産と消費を変えようという話であり、その負担は代替素材を開発しなければならない企業と、値上がりした製品を買わなければならない消費者に実際に回ってくる。包装材を変えるのにかかる費用は抽象的ではない。
一方、回収事業は費用が予測可能で成果も写真に残る。政策担当者が回収を好むのにはこうした理由がある。
それでも削減が先に立たなければならない理由は単純だ。回収はますます高くつき、削減はますます安くなる。砕けるほど回収費用は跳ね上がり、深海まで下りた粒子の回収費用は事実上無限大に近い。
逆に素材転換と再使用の仕組みは初期投資が大きいが、規模が大きくなるほど単価が下がる。二つの曲線は反対に動く。
あきらめは警戒しなければならない。92%という検出率は絶望の根拠として読まれるより、どこをふさぐべきかを教えてくれる地図に近い。リサイクル表示ひとつで責任を終わらせる態度も同じだ。細かく砕ける素材をそのままにしてラベルだけ変えることは、問題を先送りするにとどまる。
蓄積経路まで解明されたという点が重要だ。経路が分かればどの段階で断つかを決められる。警告にとどまっていた対応が設計可能な対策へ進める。
買い物のときに包装材を一度ひっくり返してみることから始めてもよい。同じ品物なのに外装が三重のものと一重のものが同じ売り場に並んでいる場合はよくある。どちらを手に取るかが売上データに残り、そのデータは次の四半期の包装設計に反映される。
