
ヒマラヤの高地に3624カ所の水たまりがぶら下がっている。国際総合山岳開発センター(ICIMOD)が8月31日に公表した集計で、このうち47カ所はいつか堤が崩れて谷を襲いかねない潜在的危険群に分類され、湖ごとに名前まで付けられていた。そしてネパールとチベットの境界で実際に水があふれ出た。死者1003人、行方不明者4462人という集計が9月1日午後に出た。
水が最初に達したのは、ネパールと中国チベットが接する国境検問所だった。5階建ての建物が丸ごと崩れて消えた。山から崩れ落ちた氷河が下ってくる途中で岩石も巻き込み、規模を膨らませたまま検問所を襲ったという説明が出たが、8月31日の報道時点で惨事の発生機序は解明作業が進行中だ。
どの湖がどのように決壊したのかは調査が答えるべき部分だ。どの湖が危ういのか、それを誰が見ていたのかは、災害の前から文書に残っていた。
イムジャ湖はそのリストの象徴のような存在だ。ヒマラヤで最も危険な超大型氷河湖に挙げられてきており、水位を下げる工事まで実施された。それでも湖は拡大を続けている。1カ所を抑え込んでいる間に、氷河が解けてできた新しい水たまりが谷のあちこちで増えているということだ。
氷河湖監視の難しさは地形にある。水をためた湖はたいてい国境の上側にあり、水を受ける集落は下側にある。ネパール洪水予報局が上流の氷河の動きをリアルタイムで受け取れるようにしてほしいと中国側に要請したのは約3カ月前だ。協定を締結する権限がないという理由で実務協議は確答のないまま終わったというのがネパール側の説明だ。
この問題をめぐり、原因も責任も対応も一国の中では整理できないという評価が出た。上流で観測装置が何を読み取ったのかを下流が知らなければ、谷沿いに暮らす人々が避難する時間は水が到着した後にしか生まれない。
影響はヒマラヤの国々にとどまらない。バングラデシュのジャンナトゥル・ナイム・ピアル記者はデイリー・スター紙のコラムで、ヒマラヤに発する水系が自国まで続いている点を指摘した。山で起きたことが数カ国を経て河口まで達するという認識がその文章に込められた。
望みをつなげるのは、解決策を新たに発明する必要がないという点だ。危険な湖のリストは作成されており、水位低減工法はイムジャ湖で実行された前例があり、上流の観測値を下流へ流す技術は標準化されている。欠けていたのは、その技術を国境の向こうへ渡すという合意だ。47カ所という分類と8カ所という別の集計が同時に出回っている状況自体が、危険評価を共有された一つの基準に合わせる作業が残っていることを示している。
韓国の山岳・気候研究機関と開発協力事業もこの領域に接している。ヒマラヤの氷河湖観測協力と早期警報設備の支援がどのような名称で進められているのか、予算と成果がどこで公開されているのかを確かめることは、市民の誰でもできる。
水は国境の標識を読まずに流れる。検問所はパスポートを確認するために建てられたが、その日そこへ押し寄せたのは上流で決壊した氷河湖だった。3624カ所の湖はそのままあり、次の夏は必ず来る。
