
国民健康保険公団が2023年に発表した資料によると、2022年基準で睡眠障害で診療を受けた患者は109万9千人に達する。2018年の85万5千人から5年で28.5%増加した数値だ。60代が全体の患者の23%で最も多いが、年齢層を問わず増加傾向が顕著だ。
不眠症は一時的な眠れない夜とは異なる。眠りにくい、頻繁に目が覚める、早朝に目が覚める、深く眠れず朝も疲れが続く状態が3ヶ月以上繰り返され、日中の生活に支障をきたす場合は不眠症と見なされる。
単に睡眠時間が不足している問題ではなく、脳の覚醒システムが過剰に活性化されており、交感神経系が過度に活性化されて体が持続的な緊張状態に置かれている。
このような状態が続くと、記憶力と集中力が低下し、感情のコントロールが難しくなる。長期的にはうつ病や不安障害が伴いやすく、免疫力の低下につながる可能性がある。
交感神経系の過剰活性化は高血圧、糖尿病、心血管疾患とも関連している。睡眠不足は単なる疲労の問題ではなく、身体全体の恒常性を崩す理由だ。
アメリカ睡眠学会と国内の睡眠関連学会が共通して推奨する不眠症治療の優先順位は認知行動療法だ。認知行動療法は、誤った睡眠習慣や睡眠に対する非現実的な期待、否定的な信念を修正する方法で進められる。
2011年に韓国の大学生を対象にした研究では、認知行動療法を受けたグループは不眠症の重症度スコアとベッドで起きている時間が有意に減少した。2010年に慢性不眠症患者を対象にした研究では、治療後の睡眠効率が51%から92%に改善され、眠るのにかかる時間は60.2分から10.6分に短縮された。
2020年の研究では、脳波測定を通じて治療後に高周波帯域のパワーが減少し、覚醒状態が緩和されたことが確認された。
認知行動療法は睡眠衛生教育、睡眠制限、刺激調整、リラクゼーショントレーニング、認知療法などで構成される。睡眠衛生教育は、規則正しい起床と就寝時間を維持し、カフェインとアルコールの摂取を制限し、就寝前のスマートフォンやテレビの使用を減らすことを含む。
睡眠制限は、ベッドに横たわっている時間を実際の睡眠時間に合わせて調整し、睡眠効率を高める方法だ。刺激調整は、ベッドを睡眠のための空間として再定義し、ベッド-睡眠の条件付けを強化する。
いくつかの研究では、6〜8週間の治療期間中に週1〜2回のセッションを行った際に効果が現れ、治療終了後も効果が持続した。2018年に共存不眠症患者を対象にした研究では、治療1ヶ月後の追跡調査でも不眠症の重症度、睡眠効率、うつ、不安、生活の質などが改善された状態を維持していた。
睡眠衛生管理は、認知行動療法とともに、または独立して適用できる方法だ。毎日同じ時間に起きて寝ることが最も基本だ。週末にも平日と似た時間を維持すれば、生体リズムが安定する。
カフェインは午後2時以降の摂取を避けるのが良い。カフェインの半減期は約5〜6時間で、夕方に飲んだコーヒーが夜遅くまで影響を及ぼす可能性がある。アルコールは一時的に眠りを誘導するように見えるが、睡眠の質を低下させ、中途覚醒を引き起こす。
就寝前の1〜2時間は、スマートフォンやタブレット、テレビからのブルーライトの露出を減らす時間として設定する。ブルーライトはメラトニンの分泌を抑制し、睡眠を妨げる。代わりに本を読んだり、軽いストレッチをしたり、温かい水でシャワーを浴びるなど、体と心をリラックスさせる活動が助けになる。
寝室の温度は18〜20度程度に涼しく保ち、暗く静かな環境を作る。騒音が気になる場合は、ホワイトノイズや自然の音を活用できる。ベッドは睡眠のための空間としてのみ使用し、ベッドで仕事をしたりスマートフォンを見たりする習慣は避ける。
不眠症患者は、眠りに対する不安と執着が逆に睡眠を妨げる逆説的な状況を経験する。眠らなければならないというプレッシャー、時計を何度も確認する行動、眠れないかもしれないと事前に心配する気持ちが覚醒をさらに強化する。
マインドフルネス瞑想は、このような不安と執着を手放すのに効果的だ。呼吸に注意を向け、現在の瞬間に留まり、浮かんでくる思考を判断せずに観察する訓練を通じて過覚醒状態を緩和できる。週2回程度規則的に瞑想の時間を持つことが助けになり、就寝前に10〜15分程度の簡単な呼吸瞑想を行うのも良い。
漢方医学では不眠症を悩み型、驚き型、熱感型、消化障害型などに分けてアプローチする。鍼、漢方薬、灸などの治療を通じて身体的な不均衡を調整し、王灸や足浴などの伝統的な補助療法を併用することもある。
20年間睡眠薬を服用していた患者が鍼治療と瞑想を併用して2ヶ月で睡眠薬の服用量を半分に減らし、睡眠効率を改善した事例も報告されている。
不眠症は脳が送る信号だ。過度に緊張している、体が回復する時間を必要としているという信号。3ヶ月以上睡眠の問題が続いたり、日中の疲労感が日常を妨げる場合は専門家に相談する必要があるが、その過程でも薬物に依存するのではなく、認知行動療法と生活習慣の修正を優先的に試みることが重要だ。
研究は一貫して示している。誤った睡眠習慣を修正し、睡眠に対する非現実的な期待を手放し、身体のリズムを取り戻す過程が薬物よりも持続可能な回復を可能にすることを。6〜8週間の努力が必要だが、その時間の間に体は再び自分で眠る方法を学ぶ。
眠りは意志で強制できるものではない。むしろ、眠りに対する執着を手放し、体が自然に回復できる環境を作ることが回復の始まりだ。
規則的なリズム、リラックスした心、睡眠のための空間。この小さな変化が積み重なり、再び深く眠る夜を取り戻すことができる。









